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“未完”で生きるという選択

パーパス思考とプロセス志向


「もっと健やかに、もっと自分らしく」。そんな願いをもつあなたと共に「未来志向の健幸(けんこう)」をテーマに、身体・心・社会とのより良い関係性を紐解いていきます。今回のテーマは「未完で生きるという選択」です。



完成を急がなくてもいい


社会には「完成された姿」が溢れています。SNSに並ぶ洗練された日常、結果を求められるビジネス、効率化された学び。いつしか私たちは「完成しなければいけない」と思い込むようになりました。

でも、本当にそうなのでしょうか?

人は常に変化の途上にいて、感情も環境も日々変化し揺らいでいる。「未完であること」そのものに、実はウエルビーイングのポイントが隠されているのかもしれません。

完成至上主義から、プロセスを楽しむ思考へ


未完は“終わっていない”のではなく、“育っている”状態

ゴール思考の疲れ

「いつ結果が出るのか」「いつになったら理想の自分になれるのか」そうした思考に縛られると、今この瞬間にある小さな手応えや余白を見失いがちです。

結果だけを追う思考は、時に焦燥感や自己否定を生み、“完璧でなければ意味がない”という誤った前提を強化してしまいます。

未完を受け入れる美意識

日本文化には「侘び寂び」という言葉があります。それは、壊れた茶碗の継ぎ目に美しさを見出したり、枯れかけた花に風情を感じたりする感性。「不完全であること」にこそ、味わいや深みがあるという逆転の美学です。



完成ではなく、成長・変化・余白に価値を置く。その視点は、現代におけるウエルビーイングの再定義につながるかもしれません。

パーパス(目的)とプロセス(過程)を両立させる


「なぜやるのか」と「どう進むか」はセットで考える


パーパスだけでは苦しくなる

近年、企業や個人でも「パーパス(存在意義・目的)」が注目されています。けれど、目的ばかりが強調されると、「まだそこにたどり着いていない自分」に苦しみを感じることもあります。

プロセス志向がパーパスを支える

目的があるからこそ、「いま、ここにいる意味」が生まれる。でも、その途中経過を味わえなければ、道のりは空虚になってしまいます。

  • 今日できた、小さなチャレンジ

  • 途中でわかった、自分の気持ちの変化

  • 完成していなくても、誰かと分かち合えたこと

そんなプロセスの豊かさが、パーパスの重みをやさしく支えてくれるのです。

未完を肯定して生きる3つのポイント


“足りなさ”ではなく“伸びしろ”として見る

1. ゴールより、「今の問い」を持つ

問いを持っている状態は、未完であることを自覚しながら前に進む姿勢。完璧な答えより、「自分にとって大切な問いは何か?」を見つけることが、人生の軸になります。

例えば「なぜ私はこれをやりたいのだろう?」「いま大切にしたいものは何だろう?」

2. 小さな“進捗”を祝う習慣を持つ

To Doリストではなく「できたリスト」を作る。毎晩、自分に「今日一歩進んだことは何か?」と問いかける。

  • 数字だけで測らなくていい

  • 感情の変化や気づきも“進捗”として数える

3. 不完全な自分を「受け容れる」勇気


まだ途上で答えはない。でもそんな自分をさらけ出すことで、人間関係には深みをもたらすのではないでしょうか。共感や対話は、“未完成”だからこそ生まれるのかもしれません。

  • 完成していなくても過程を楽しんでみる

  • ありたい完成図をいつも夢想しておく


未完だから私たちは明日を生きられる


わたしはまだ、完成していない。だから、わたしには未来がある。」 ル・コルビュジエ(1887–1965/フランス/建築家)

「ちゃんとできていない」「まだ自信がない」「もっと良くならなきゃいけない」

そんな言葉が浮かんだときは、こう考えてみてください。 未完であることは、可能性のしるし。それは、今もなお生きて伸び続けている証です。

誰もが誰かのライフセーバーに

みんなを救うヒーローじゃなくていい。ほんの少し、周りを見渡して。悩んでいる人、困っている人がいたら、そっと心を寄せてみませんか。「見てくれている人がいる」という安心が、社会のあたたかさを育てていきます。 lifesaver.love

【参照文献・出典】

  • Carol Dweck (2006). Mindset: The New Psychology of Success

  • Simon Sinek (2009). Start with Why

  • 国際教養大学『未完の人間としての成長論』(2021)

  • 日本美学会:侘び寂びとプロセス美の比較研究(2020)

  • ル・コルビュジエ著作・講演録より再構成

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