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感情の筋トレ しなやかに折れない心を育てる

小さな「心の回復力」が人生を支えてくれる

これは特別な人のためのメンタル術ではありません。誰もが育てられる“しなやかな強さ”の話です。



「もっと健やかに、もっと自分らしく」。 そんな願いをもつあなたと共に、「未来志向の健幸(けんこう)」をテーマに、身体・心・社会とのより良い関係性を紐解いていきます。

今回のテーマは「感情の筋トレ」。 それは、重たい感情をなくす方法ではなく、感情に“のまれない力”を日常の中で育てる習慣のことです。


マイクロレジリエンス習慣


現代は、感情が忙しい時代です。 不安、焦り、怒り、そしてふとした寂しさ…。SNSやニュースから飛び込んでくる刺激的な情報は、知らず知らずのうちに私たちの感情を揺らし続けています。

では、どうすれば感情に振り回されず、自分らしさを保ち続けることができるのでしょうか? 答えのひとつは、「小さなレジリエンス=マイクロレジリエンス」を積み重ねることにあります。

感情は「消す」ものではなく「整える」もの 脳科学と心理学が語る感情の調律法

感情は“防衛本能”から生まれている


感情の正体は、脳の「扁桃体(へんとうたい)」という部位の活動によって生まれると言われています。 これは原始的な防衛本能を司る部位で、外界の変化に「危険だ」と反応して私たちを守ってくれているのです。


しかし現代社会では、この反応が過剰になることがあります。 たとえばメールの未返信、SNSの比較、予定通りにいかない日常…。本来危険ではない出来事にも扁桃体が反応し、過度なストレスや不安感を引き起こしてしまうのです。

自分で感情を「調律」する力=セルフ・レギュレーション


この感情の波に呑まれないために、カギを握るのが前頭前皮質(PFC)と呼ばれる脳の“理性”のエリアです。 このPFCを活性化することで、扁桃体の反応を「一呼吸」おいて受け止めることができるようになります。

つまり、感情に反応する前に「一時停止」する力=セルフ・レギュレーション(自己調整)を鍛えることが、日々の穏やかさとレジリエンスの源となるのです。


マイクロレジリエンスを育てる3つの感情習慣

1日3分からできる「心の筋トレ」


1.「ラベリング」:感情に名前をつける

自分が今、どんな感情にいるかを「言葉にする」ことで、感情の正体が明確になります。 たとえば「なんとなくモヤモヤする」ではなく、「今、自分は不安を感じている」「焦っている」といった具合に。

言葉にするだけで扁桃体の活動が落ち着き、感情との距離が生まれることが脳科学でも示されています(UCLA社会認知神経科学研究所の実験より)。

習慣ヒント: 朝や昼に、今の気分を一語で書き出す「感情ログ」を3日続けてみる。


2.「ことばの再構築」:セルフトークを変える

自分にかける言葉の質が、感情の質を左右します。 「なんでできないんだ」より「今日はここまで進めた自分を認めよう」といった**セルフ・コンパッション(自己への思いやり)**が、長期的なレジリエンスにつながるとされています。

習慣ヒント: 夜寝る前に、「今日、ちゃんとやったこと」を1つ書き出す習慣を。


3.「間をとる」:3分の静寂タイム

感情が高ぶっているときほど、立ち止まることが大切です。 1分でも3分でもいい。深呼吸や軽いストレッチで「今の瞬間に戻る」ことが、感情の流れをリセットしてくれます。

習慣ヒント: タイマーを3分に設定し、ただ座る。呼吸に意識を向けるだけでOK。


感情との良い距離感を持つということ

「レジリエンスとは、跳ね返る力ではなく、しなやかに折れない力である」 ルーシー・ホーン博士(1970年代生まれ/ニュージーランド/ポジティブ心理学研究者)



私たちの心は、鍛えればしなやかになります。 レジリエンスは特別な才能ではなく、日々のちょっとした「気づき」と「言葉」と「休息」で育てられる力です。


感情に敏感であることは、弱さではなく、豊かさ。 自分の内面を整える習慣を持つことで、外の世界との関係性も変わっていく――そんな感覚を、あなたの毎日に取り入れてみませんか?


誰もが誰かのライフセーバーに


みんなを救うヒーローじゃなくていい。

ほんの少し、周りを見渡して。悩んでいる人、困っている人がいたら、そっと心を寄せてみませんか。

「見てくれている人がいる」という安心が、社会のあたたかさを育てていきます。



【参照文献・出典】

  • UCLA Social Cognitive Neuroscience Lab, Matthew Lieberman et al. (2007). Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity.

  • Lucy Hone, PhD. (2016). Resilient Grieving

  • Kristin Neff, PhD. (2011). Self-Compassion: The Proven Power of Being Kind to Yourself

  • Daniel Goleman & Richard Davidson (2017). Altered Traits

  • セネカ著『人生の短さについて』(岩波文庫)

  • 米国国立精神衛生研究所(NIMH)公式サイトより

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Guest
Apr 18
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