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静寂の効能 ノイズ社会で“何もしない力”を取り戻す

更新日:3 日前


「静けさ」に触れると、心がやわらぐ理由


「もっと健やかに、もっと自分らしく」そんな願いをもつあなたと共に「未来志向の健幸(けんこう)」をテーマに、身体・心・社会とのより良い関係性を紐解いていきます。


今回は「静寂の効能」。それは“何もしない”ことを、もう一度価値ある行為として取り戻す試みです。


現代は「常に何かしている」ことが良しとされがちです。SNS、メール、通知、音声メディア、BGM…。気づけば一日じゅう“音”と“情報”の渦の中にいる私たち。

でも、そんな時代だからこそ、あえて静けさに身を置くことが、心身のバランスを取り戻す一助になります。「沈黙」は、私たちの内側と再び出会うための余白なのです

脳がよろこぶ“音のない時間 静寂がもたらす科学的・心理的効果


音刺激からの“解放”がもたらすもの


2013年、デューク大学の研究によって、1日2時間の静寂が「脳の可塑性(変化・成長する力)」を高めることが確認されました。これは新しい神経細胞の生成(特に記憶を司る海馬領域)にも関連しており、「静けさ=脳のリセットボタン」とも言えるのです。


また、静寂はストレスホルモン(コルチゾール)を低下させる効果もあります。都市部に住む人々の多くが慢性的な“音ストレス”にさらされていることも近年明らかになっており、静かな時間が回復の時間となるのは、理にかなっています。



デフォルト・モード・ネットワークの再起動


静寂のもうひとつの効能は、「何もしない時に働く脳のネットワーク」といわれるデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の活性化にあります。このDMNは、創造性、記憶の整理、内省と深い関連があります。

つまり、静けさの中で「ぼんやり考える」ことが、実は直感力やアイディアを育てているのです。子どもの自由遊び、大人の散歩、夜の湯船。これらはただの休憩ではなく、「心の整理」と「創造の準備」を内側で進めてくれている時間と言えるでしょう。



日常に静寂を取り戻す3つの習慣


音と情報から少し離れるだけで心がやわらぐ


1. 朝の3分間「音なしタイム」

朝起きてすぐにスマホに触れる前に、まず窓を開けて、外の音に耳を澄ませてみる。鳥の声、風の音、まだ静かな町の気配。自然の音だけに包まれる時間が、交感神経優位なモードから「副交感神経への切り替え」を促します。 実践ヒント: アラームを止めたあと、3分だけ“何も再生しない”静かな時間をつくる。

2. デジタルデトックス・スロットの導入

1日中つながっている感覚は、脳を疲弊させます。「通知を切る」だけでも大きな効果がありますが、さらにおすすめなのが**“デジタルデトックス・スロット”**の設定。

たとえば、

  • 昼食後の15分間はスマホを別部屋へ

  • 電車での移動中は音楽ではなく“無音”

  • 寝る1時間前はデバイスをオフに

など、意図的に“音・情報”から離れる小さな習慣を持つことで、静けさが戻ってきます。

3. 静寂のための「空間」を整える

物音や雑音が多い生活環境では、そもそも静寂が入り込む余地がありません。だからこそ“静寂を歓迎する空間”を自らつくる工夫が大切です。

  • 家の一角に「音を持ち込まない場所」を決める(読書・瞑想コーナー)

  • 寝室の照明と音を最小限に

  • 香りや自然素材を取り入れて、五感を“静けさモード”に切り替える

実践ヒント: 小さな観葉植物やアロマを活用すると、視覚・嗅覚からも静寂が感じられます




「間」を取り戻すことで、自分が戻ってくる


私たちは「沈黙」に対して、どこかで“怖さ”や“無意味さ”を感じてしまうことがあります。でも本当は、その静けさの中にこそ、本来の自分がそっと戻ってくる時間があるのです。


「人の内には全体を包含する魂があり、それは〈賢者の沈黙〉であり、普遍の美である」 ラルフ・ワルド・エマーソン(1803–1882/アメリカ/思想家・詩人)

静寂は、決して「何もしない」ことではありません。それは、余白をもって世界を見つめ直すという、豊かな行為。一日の中にほんの少しの「静けさ」を取り入れることで、あなたのウエルビーイングは、静かに、そして確実に育っていきます。



誰もが誰かのライフセーバーに


誰かの命を救うのは、医師やカウンセラーだけではないかもしれません。たったひと言「どうしたの?」と声をかけてくれたあの人。何も言わず、ただそばにいてくれたあの人。そうした誰かの存在が「孤立」という選択肢を遠ざけてくれると考えています。


私たち一人ひとりが、誰かの「ライフセーバー」になることが求められている時代です。その第一歩は、見えない心の声に静かに耳を澄ますことから始まるのではないでしょうか。


【参照文献・出典】

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