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静寂の効能 ノイズ社会で“何もしない力”を取り戻す


「静けさ」に触れると、心がやわらぐ理由


「沈黙は心の友である」 ラルフ・ワルド・エマーソン(1803–1882/アメリカ/思想家・詩人)



「もっと健やかに、もっと自分らしく」。そんな願いをもつあなたと共に「未来志向の健幸(けんこう)」をテーマに、身体・心・社会とのより良い関係性を紐解いていきます。

今回は「静寂の効能」。それは“何もしない”ことを、もう一度価値ある行為として取り戻す試みです。

現代は「常に何かしている」ことが良しとされがちです。SNS、メール、通知、音声メディア、BGM…。気づけば一日じゅう“音”と“情報”の渦の中にいる私たち。

でも、そんな時代だからこそ、あえて静けさに身を置くことが、心身のバランスを取り戻す一助になります。「沈黙」は、私たちの内側と再び出会うための余白なのです。

脳がよろこぶ“音のない時間 静寂がもたらす科学的・心理的効果


音刺激からの“解放”がもたらすもの


2013年、デューク大学の研究によって、1日2時間の静寂が「脳の可塑性(変化・成長する力)」を高めることが確認されました。これは新しい神経細胞の生成(特に記憶を司る海馬領域)にも関連しており、「静けさ=脳のリセットボタン」とも言えるのです。


また、静寂はストレスホルモン(コルチゾール)を低下させる効果もあります。都市部に住む人々の多くが慢性的な“音ストレス”にさらされていることも近年明らかになっており、静かな時間が回復の時間となるのは、理にかなっています。



デフォルト・モード・ネットワークの再起動


静寂のもうひとつの効能は、「何もしない時に働く脳のネットワーク」― デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の活性化にあります。このDMNは、創造性、記憶の整理、内省と深い関連があります。

つまり、静けさの中で「ぼんやり考える」ことが、実は直感力やアイディアを育てているのです。

子どもの自由遊び、大人の散歩、夜の湯船。これらはただの休憩ではなく、「心の整理」と「創造の準備」を内側で進めてくれている時間と言えるでしょう。



日常に静寂を取り戻す3つの習慣


音と情報から少し離れるだけで心がやわらぐ


1. 朝の3分間「音なしタイム」

朝起きてすぐにスマホに触れる前に、まず窓を開けて、外の音に耳を澄ませてみる。鳥の声、風の音、まだ静かな町の気配。自然の音だけに包まれる時間が、交感神経優位なモードから「副交感神経への切り替え」を促します。 実践ヒント: アラームを止めたあと、3分だけ“何も再生しない”静かな時間をつくる。

2. デジタルデトックス・スロットの導入

1日中つながっている感覚は、脳を疲弊させます。「通知を切る」だけでも大きな効果がありますが、さらにおすすめなのが**“デジタルデトックス・スロット”**の設定。

たとえば、

  • 昼食後の15分間はスマホを別部屋へ

  • 電車での移動中は音楽ではなく“無音”

  • 寝る1時間前はデバイスをオフに

など、意図的に“音・情報”から離れる小さな習慣を持つことで、静けさが戻ってきます。

3. 静寂のための「空間」を整える

物音や雑音が多い生活環境では、そもそも静寂が入り込む余地がありません。だからこそ“静寂を歓迎する空間”を自らつくる工夫が大切です。

  • 家の一角に「音を持ち込まない場所」を決める(読書・瞑想コーナー)

  • 寝室の照明と音を最小限に

  • 香りや自然素材を取り入れて、五感を“静けさモード”に切り替える

実践ヒント: 小さな観葉植物やアロマを活用すると、視覚・嗅覚からも静寂が感じられます




「間」を取り戻すことで、自分が戻ってくる


私たちは「沈黙」に対して、どこかで“怖さ”や“無意味さ”を感じてしまうことがあります。でも本当は、その静けさの中にこそ、本来の自分がそっと戻ってくる時間があるのです。

「沈黙は心の友である」 ラルフ・ワルド・エマーソン(1803–1882/アメリカ/思想家・詩人)

静寂は、決して「何もしない」ことではありません。それは、余白をもって世界を見つめ直すという、豊かな行為。一日の中にほんの少しの「静けさ」を取り入れることで、あなたのウエルビーイングは、静かに、そして確実に育っていきます。



誰もが誰かのライフセーバーに


みんなを救うヒーローじゃなくていい。

ほんの少し、周りを見渡して。悩んでいる人、困っている人がいたら、そっと心を寄せてみませんか。

「見てくれている人がいる」という安心が、社会のあたたかさを育てていきます。


【参照文献・出典】

  • Duke University Medical Center (2013). “Silence promotes the development of new brain cells.”

  • Harvard Health Publishing (2020). “Why silence is good for your brain.”

  • Raichle, M. E. (2001). Default Mode of Brain Function. PNAS.

  • Pico Iyer, The Art of Stillness(TED Books, 2014)

  • ラルフ・W・エマーソン著『自然について 他一篇』(岩波文庫)

  • NHK出版『沈黙のチカラ』(2022)より要素再構成

1 comentário

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Convidado:
18 de abr.
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「間」って大切ですよね👍

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