食べる幸福学
- 西村公志
- 4月10日
- 読了時間: 4分
あなたの心を育てる“腸と食感情”の関係
「何を食べるか」より「どう感じて食べるか」
「もっと健やかに、もっと自分らしく」。そんな願いをもつあなたと共に「未来志向の健幸(けんこう)」をテーマに、身体・心・社会とのより良い関係性を紐解いていきます。
今回のテーマは、「食べることと幸福感の関係」です。
食は、私たちにとって最も身近なウエルビーイングの入口。けれど、“心”と“食”のつながりについて、意識したことはあるでしょうか?

朝ごはんを抜いて慌ただしく仕事へ向かう日。ひとりで夜にコンビニ弁当を食べる日。気づけば“栄養”だけでなく、“感情”までもが置き去りになっている。
実は、食べることは「心のメンテナンス」でもあり、「感情の土壌を耕す行為」でもあります。特に近年では、「腸と脳の関係(腸脳相関)」に注目が集まり、食と幸福感の科学的なつながりが明らかになってきました。
科学が示す“腸と幸福感”のつながり
腸は“第二の脳”である
この言葉は、今や医学界でも定着しつつあります。腸には約1億個の神経細胞が存在し、脳とは独立して感情に影響を与える力を持っているといわれています。
幸福ホルモンの90%は腸でつくられる
セロトニンという神経伝達物質は、「幸せホルモン」とも呼ばれ、心の安定やポジティブな気分に大きく関与します。驚くべきことに、このセロトニンの90%以上が腸内で生成されているのです。
腸内環境が整っていると、セロトニンがスムーズに分泌され、気分の安定や睡眠の質向上にもつながります。逆に腸内フローラ(腸内細菌群)のバランスが乱れると、メンタルの不調を感じやすくなるという報告も多数あります。

食が“感情の栄養”になるという考え方
オーストラリアの精神栄養学者フェリス・ジャッカ博士は、「うつ病の予防や回復には、薬だけでなく“食事の見直し”が欠かせない」と説いています。彼女の研究では、地中海食のような食物繊維や発酵食品、オメガ3脂肪酸を多く含む食事が、うつ症状の改善に有効であることが示されました。
日々の食べ方で育つ「感情の土壌」
食べ方の質が、心の質を変える
食材だけではなく、「どう食べるか」もまた、私たちの幸福度に大きく影響します。ここでは、今日から取り入れられる3つの“食感情”習慣をご紹介します。

1. 朝食は「心のエンジンをかける時間」
朝食をとることで、腸が目覚め、脳に「今日が始まる」というサインを送ることができます。軽くてもいい。あたたかいスープ、炊きたてのご飯、果物の甘み——「朝にやさしい味」を感じることが、その日の感情のベースを作ってくれます。
実践ヒント: 「おいしい」よりも「ほっとする」を基準に、朝食を選んでみましょう。
2. 発酵食と“腸の声”を聞く習慣
ヨーグルト、味噌、納豆、ぬか漬け…。発酵食品は、腸内細菌を整えるだけでなく、“どんな食事が自分の心身に合っているか”を知る感覚も育ててくれます。
実践ヒント: 発酵食品を取り入れた翌日の気分や体調を記録して、自分なりの“食と気分の相関図”をつくってみましょう。
3. 「誰と、どこで、どう食べるか」が幸福度を左右する
食事は、本来“社会的な行為”でもあります。研究によると、1人で食べるより、誰かと楽しく食べるほうが幸福感が高まるとされています。また、スマホを見ながら食べるより、丁寧に盛りつけられた器と向き合うことで、「満足感」も高まります。
実践ヒント: 週に1回だけでも、“誰かと食卓を囲む時間”や“スマホを手放す食事”を意識してみましょう。
心と食卓をつなぐということ
「私たちは、食べたものでできている。そして、食べたもので感じている」
心を育てるというと、どうしても特別な知識や修行が必要に思えるかもしれません。でも、まずは「食べること」にやさしいまなざしを向けてみるだけでいい。
お腹だけでなく、心まで温まる食事。それはきっと、“今日の自分を大切にできた”という実感をそっともたらしてくれるはずです。
誰もが誰かのライフセーバーに
みんなを救うヒーローじゃなくていい。
ほんの少し、周りを見渡して。悩んでいる人、困っている人がいたら、そっと心を寄せてみませんか。
「見てくれている人がいる」という安心が、社会のあたたかさを育てていきます。
【参照文献・出典】
Jacka, F. (2019). Brain Changer: How Diet Can Save Your Mental Health
UCLA Microbiome Center (2022). “Gut-Brain Axis and Mental Health”
Harvard T.H. Chan School of Public Health. The Nutrition Source
Enders, G. (2015). Gut: The Inside Story of Our Body’s Most Underrated Organ
厚生労働省「食とメンタルヘルス」レポート(2023)
日本栄養士会:栄養とこころの健康に関する啓発資料
私たちは、食べたものでできている。よく聞くフレーズですがなかなか自律できずにジャンクフードにも手を出してしまいます、いま一度何を食べるか、誰と食べるかをよく考えてみたいと思います👍