若者の心の叫びを聴く 見えないSOSに気づくために
- ACBaL
- 2024年12月24日
- 読了時間: 4分
更新日:4月19日
見えない心の声に、あなたは気づいていますか?
毎年、春になると桜が咲き、制服がまぶしく映る季節。街では、新たな生活を始める若者たちの姿があふれています。希望に満ちた門出のはずなのに、どこか不安げな瞳、無理をして作ったような笑顔に、ふと胸騒ぎを覚えることはありませんか?

私たちは、あまりに多くの「大丈夫そうに見える若者」が、静かに、しかし確かに、心の奥で助けを求めていることに気づかずにいます。社会の中で声を上げられず、自ら命を絶つことを選んでしまう――そんな悲しい現実が、今の日本にはあるのです。
日本における若者の自殺の現状とその背景を紐解きながら、私たち一人ひとりが「誰かのライフセーバー」になれる可能性について考えてみたいと思います。
若年層の自殺はなぜ多いのか
データから見える日本の課題
2023年、日本における小中高生の自殺者数は529人と、統計を取り始めた1980年以降で最多を記録しました(参考文献1参照)。また、15〜39歳の死因の第1位が「自殺」であるという事実は、日本がG7の中で唯一抱える深刻な社会的課題です(参考文献2参照)。
若者の命が、これほどまでに脆く危うくなっている背景には、いくつもの複雑な要因があるようです。たとえば、以下のような状況です。
学校におけるいじめや人間関係の悩み
家庭内の不和、虐待、過干渉あるいは無関心
就職活動の失敗やキャリアへの不安
SNSによる比較・誹謗中傷・孤独感の助長
「こうあるべき」という社会的期待のプレッシャー

特に現代の若者は、SNS上で常に他人と自分を比較する環境に晒され、常に「見られている」意識の中で自己評価が歪みがちです。結果として、自己肯定感が低下し、誰にも頼れず、心を閉ざしてしまうケースが少なくないようです。
未然に防ぐために大人にできる3つのアクション
小さな気づきが命を救う
自殺を未然に防ぐことは、専門家だけの仕事ではありません。特別な知識やスキルのない私たち一般の大人にも、できることがあります。それは決して難しいことではなく、日々の小さな関わりの中で可能な「気づき」と「共感」です。
1. 若者の変化に敏感になる
言葉よりも、むしろ「沈黙」や「表情」に注意を向けてみてください。いつも明るい子が急に口数が減った、笑顔がぎこちなくなった、何かを避けているように見える。そんな些細な変化が、心のSOSのサインであることがあります。
「最近どう?」「無理してない?」こうした誰かの一言が、本人にとって「見てくれている人がいる」と感じさせる大きな支えとなります。
2. 否定しないで、聴くことに徹する

悩みを打ち明けてくれたとき、「そんなの気にしなくていいよ」「みんなそうだよ」とすぐに返してしまうことは、時に相手をさらに追い詰めてしまうことがあります。
大切なのは「そう感じるんだね」「それは苦しかったね」と、まずはその感情をそのまま受け止めてあげること。傾聴には、相手の存在を無条件に認める力があります。
3. 必要に応じて専門機関に橋渡しを
話を聴いた結果、自分の手に負えないと感じたときには、無理をせず、信頼できる第三者にバトンを渡すことも選択肢として必要です。学校のカウンセラー、自治体の相談窓口、NPOや専門機関など、適切なリソースにつなぐことで、持続的な支援が可能になることもあります。
先人からの助言
「人は誰かに話を聴いてもらうことで、自分の存在を確認する。」 カール・ロジャーズ(米国 1902年〜1987年、心理学者)
ロジャーズのこの言葉は、現代の若者にも、そしてその周囲にいる私たちにも、大切なメッセージを投げかけています。
誰かに言葉を届け、「応答」があるだけで、自分の存在を信じることができるのです。
誰もが誰かのライフセーバーに
誰かの命を救うのは、医師やカウンセラーだけではないかもしれません。たったひと言「どうしたの?」と声をかけてくれたあの人。何も言わず、ただそばにいてくれたあの人。そうした誰かの存在が「自殺」という選択肢を遠ざけてくれると考えています。
私たち一人ひとりが、誰かの「ライフセーバー」になることが求められている時代です。その第一歩は、見えない心の声に静かに耳を澄ますことから始まるのではないでしょうか。

参考文献
警察局「令和6年中における自殺の状況(速報値)」
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R07/R6jisatsunojoukyou.pdf
厚生労働省「若年層の自殺をめぐる状況」