腸で眠り脳で休む 快眠とセロトニン
- 西村公志
- 5月6日
- 読了時間: 3分
“よく眠る”は腸からはじまる。
「もっと健やかに、もっと自分らしく」。そんな願いをもつあなたと共に「未来志向の健幸(けんこう)」をテーマに、身体・心・社会とのより良い関係性を紐解いていきます。今回のテーマは「快眠と腸の関係」です。

眠れない夜。深く眠れたはずなのに、朝がつらい。そんな悩みは、決して“脳の問題”だけではありません。近年の研究では、「腸内環境と睡眠の質」に密接な関係があることが次々と明らかになっています。
眠りとは、“腸の静けさ”が脳に伝わるプロセス。今回は、そんな新しい視点から「心地よい眠り」のヒントを探っていきます。
腸は“夜の静けさ”をつくる臓器
ホルモン、神経、リズムの起点としての腸
セロトニンとメラトニンは腸でつくられる
私たちの「眠り」をつかさどるホルモンには、昼間の“安心感”を生み出すセロトニンと、夜間の“眠気”を誘うメラトニンがあります。

驚くことに、このセロトニンの約90%以上が腸で生成されているのです。そして、セロトニンから合成されるメラトニンも、腸内環境の影響を大きく受けることがわかってきました。
つまり「眠る脳」の土台は「健やかな腸」にあるのです。
腸内細菌と“体内時計”のつながり
腸内細菌たちは、私たちの生活リズムにも反応しています。規則正しい時間に食事をすることで、腸内細菌の活動リズムが整い、体内時計がチューニングされやすくなるのです。
逆に、深夜の食事や昼夜逆転の生活は、腸内環境を乱し、その結果として寝つきの悪さや中途覚醒、睡眠の質の低下にまで波及する可能性があると報告されています。
腸で眠るための3つのナイトルーティン
“ぐっすり”は、夜の過ごし方で決まる
1. 「腸のゴールデンタイム」を意識する
腸の働きは副交感神経が優位になることで活性化します。特に夜22時〜翌2時の間は、腸と脳が“休息モード”に入るための大切な時間帯。
ヒント
夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませる
寝る直前の糖分・アルコール・冷たい飲み物は控える
2. 夜のセロトニン習慣をつくる
セロトニンを育てるには、トリプトファンというアミノ酸が必要です。バナナ、納豆、豆腐、ナッツなどを少量・消化にやさしい形で夜に摂ることがおすすめです。
ヒント
軽めの夜食で「心の安定」を補う
香りのあるハーブティー(カモミール・ミント)も副交感神経をサポート
3. 腸をなだめる「呼吸と歩行」の習慣
呼吸や歩行のリズムが整うと、副交感神経が優位になり、腸の働きがスムーズになります。 ヒント
寝る1時間前、5分だけの深い呼吸(4-7-8呼吸法)
就寝前に軽く部屋を歩く/ストレッチで“腸に血流を送る”感覚を
腸が整えば眠りはもっとやさしくなる
「眠りとは、心の掃除である」 アリストテレス(前384–前322/古代ギリシャ/哲学者)
眠りとは、ただ「休む」のではなく、「整える」ための時間。そして整えるべきは、脳よりもまず、腸の静けさかもしれません。

今日の夜、眠る前に。やさしくお腹に手を当てて、自分の一日をいたわってみてください。
眠りの質が変われば、明日の質が変わります。それは健やかな未来への、最初の一歩になるかもしれません。
誰もが誰かのライフセーバーに
みんなを救うヒーローじゃなくていい。ほんの少し、周りを見渡して。悩んでいる人、困っている人がいたら、そっと心を寄せてみませんか。「見てくれている人がいる」という安心が、社会のあたたかさを育てていきます。▶︎ lifesaver.love
【参照文献・出典】
Michael D. Gershon, The Second Brain (1998)
National Institute of Health (NIH): Gut-brain axis and sleep (2022)
Harvard Medical School: How the gut influences your sleep (2023)
日本睡眠学会/e-ヘルスネット:腸内環境と睡眠の関連
厚生労働省:健康づくりのための睡眠指針(2023)