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歩くことで心が整う

歩くとほどける悩み


「もっと健やかに、もっと自分らしく」。そんな願いをもつあなたと共に、「未来志向の健幸(けんこう)」をテーマに、身体・心・社会とのより良い関係性を紐解いていきます。


今回のテーマは「歩くこと」。

それは日常の最もありふれた動作でありながら、ふと気づけば、歩いているうちに気持ちが落ち着いたり、アイディアが浮かんできたりすることがあります。

歩くとは、身体の移動だけではなく、心と対話し、思考を深める「哲学的な行為」なのかもしれません。



哲学者も詩人も、歩いて考えた


足で思索し、心を解放する


歩くことと創造性の関係

古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、教えを説く際に歩きながら語ったことから「逍遥学派」と呼ばれました。またカントやルソー、ニーチェ、さらには宮沢賢治や谷川俊太郎といった日本の文人たちも、「歩くこと」を日課として思索や創作に役立てていたと言われています。

歩くことで、脳のデフォルト・モード・ネットワーク(内省・記憶・創造に関わる脳領域)が活性化されることが近年の研究でも示されています。歩くことは、静かな“脳の再起動”でもあるのです。

感情とリズムが整っていくしくみ


一定のリズムで歩くという行為は、感情を整えるセラピーとしても注目されています。規則正しい歩行が副交感神経を優位にし、不安やイライラをやわらげる効果があるのです。

特に、自然の中を歩く「グリーンウォーキング」や「フォレストバス(森林浴)」は、

  • 血圧の安定

  • ストレスホルモン(コルチゾール)の低下

  • セロトニンの分泌促進

など心身の調律において優れた効果が報告されています。



歩くことを「心を整える時間」に変える


意識を変えれば、日常の移動が瞑想になる



1. 目的地を決めない「哲学ウォーク」

スマホも地図も見ず、感覚にまかせて歩く。曲がり角で迷ったら、自分の「気分」に尋ねてみる。そんな歩き方は、普段の思考パターンを外し、“今ここ”に戻る感覚を養います。

ヒント: 予定のない休日に30分だけ、“行き先を決めない歩き旅”を。


2. 「3分歩行」で感情を整えるスイッチに

感情が高ぶったとき、イライラしたとき。まず立ち上がり、外に出て3分だけ歩いてみる。それだけで呼吸が深まり、**“感情の風通し”**が生まれます。

ヒント: オフィスや自宅で「歩くこと」を気持ちの切り替えトリガーに。


3. 「音を消す」と“内なる声”が聞こえてくる

イヤホンを外し、周囲の音に耳を澄ます。足音、風の音、鳥の声、人のざわめき。音に気づくことは、“自分がここにいる”という実感にもつながります。

ヒント: 週に1回は“無音ウォーク”の日を設けてみましょう。



歩くことで、自分に帰っていく


「道は、歩くことによって拓かれる」 ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(1889–1951/オーストリア/哲学者)


歩くことは、私たちにとって最も原始的で、最も本質的な回復手段かもしれません。

移動のためではなく、自分に戻るために歩く。その一歩一歩のなかに、考えごとがほどけていく余白があり、沈黙の中に、小さな「気づき」が息づいています。


今日ほんの少しだけ歩いてみませんか、季節の移ろいを感じながら。



誰もが誰かのライフセーバーに


みんなを救うヒーローじゃなくていい。 ほんの少し、周りを見渡して、悩んでいる人、困っている人がいたら、そっと心を寄せてみませんか。「見てくれている人がいる」という安心が、社会のあたたかさを育てていきます。  lifesaver.love



【参照文献・出典】

  • Solnit, R. (2000). Wanderlust: A History of Walking

  • Harvard Health Publishing (2023). Walking and Your Brain

  • Stanford University (2014). Walking boosts creative inspiration

  • 厚生労働省:身体活動とメンタルヘルスに関するガイドライン(2022)

  • 『歩くことの哲学』(NHK出版/2020)

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