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共に生きる社会へ 若者の声を社会に届けるために

  • 執筆者の写真: ACBaL
    ACBaL
  • 3月11日
  • 読了時間: 4分

若者の声は、どこへ届いているだろうか


「どうせ何を言っても変わらない」「聞いてもらえないなら最初から黙っていたほうがいい」。



そんなあきらめや孤独を抱える若者たちが、今この国に数多くいます。学校、家庭、地域、そして社会全体の中で、彼らの声は本当に届いているのでしょうか。


情報化が進み、意見を発信する手段は増えたはずなのに、実際には「若者の本音」が反映される場はまだ限られています。年齢や立場によって「未熟」「経験が足りない」と扱われたり、「意識が低い」と切り捨てられたりするなかで、若者自身が「声を出す意味」を見失ってしまっているのです。


このコラムでは、若者が社会と健全につながり、自分の声を信じて発していけるような環境をどうつくっていくか。その課題と可能性を探ります。



若者の社会参加意識と現実のギャップ


内閣府の「若者の意識に関する調査(令和4年)」によると、「社会に対して自分の意見を持つことは重要だ」と答えた若者は76.3%にのぼります。一方で「自分の意見が社会に反映されると思う」と答えた割合は、わずか28.9%にとどまりました。


つまり、多くの若者は社会に関心を持ち、声を届けたいと思っているにもかかわらず「どうせ届かない」という不信感や無力感を抱えているのです。


また同調圧力の強い文化や、「空気を読む」ことが重視される日本社会では、少数意見や異なる視点での発言がしづらい傾向があります。これにより「言いたいことが言えない」「言っても否定される」という経験が繰り返され、沈黙が自己防衛手段として身についてしまうのです。



声を取り戻すために必要なこと


社会の中で声を持つということは、自分の存在を認めてもらうこと、自分の未来に対する責任を引き受けることでもあります。


そのためには、まず「声を出してもいい」と思える安心・安全な場が必要です。そして、たとえ小さな声でも、それをきちんと受け止めてくれる人や仕組みが求められます。以下に、若者の声を育て、社会とつなげていくための3つのアプローチを紹介します。



1.    傾聴の文化を家庭・学校・地域に


子どもの頃から、「話を聴いてもらえた」「意見を受け止めてもらえた」という体験は、自己表現の土台となります。



学校でのディスカッション、家庭での対話、地域のミーティングなど、意見を安心して出せる機会を増やすことが大切です。答えや正解を求めるのではなく、「どう感じたか」「何を思ったか」を自由に話せる関係性の中で、若者の声は磨かれていきます。


2. 意見を「行動」につなげる機会をつくる


若者の声が社会に届かないと感じる背景には、「声を出しても何も変わらなかった」という経験があります。そのため、意見を表明するだけでなく、「それが誰かに届いた」「何かが動いた」という成功体験を持てることが重要です。


ボランティア、地域活動、生徒会、自治体との意見交換会など、小さくても実感のある参加経験を積むことで、「声を出すことには意味がある」と思えるようになります。


3. 若者と大人が対等に語り合える場を


若者の声を本当に活かすには、大人が「教える側」「導く側」としてではなく、「一人の人間」として対話に臨む姿勢が必要です。


大人がわからないことを認め、若者から学ぼうとする姿勢を見せることで、相互の信頼が生まれます。「世代を超えて共に考える」経験は、若者が「社会の一員」である実感を得るうえで非常に効果的です。



「声」が社会を変えると知ること


社会は一人では変えられない。でも、「誰かの声」がきっかけで変わってきた事例はたくさんあります。学生による地域の防災提案が行政の政策に反映されたり、10代の提言がメディアで注目されて社会運動につながったり──。


たとえ時間がかかっても、誰かの声が社会を動かす。そうした経験やストーリーに触れることで、若者は自分の声にも価値があることに気づいていきます。



勇気ある小さな声が社会を変える


「社会を変えるのは大声ではなく、勇気ある小さな声だ。」 17歳でノーベル平和賞を受賞したパキスタンの教育活動家であるマララ・ユスフザイはこう語っているそうです。


声を上げることは、弱さではなく強さの証です。そして、その声に耳を傾ける社会こそが、共に生きる社会の第一歩であり、私たちが整えるべき社会の土壌ではないでしょうか。

誰もが誰かのライフセーバーに


誰かの命を救うのは、医師やカウンセラーだけではないかもしれません。たったひと言「どうしたの?」と声をかけてくれたあの人。何も言わず、ただそばにいてくれたあの人。そうした誰かの存在が「自殺」という選択肢を遠ざけてくれると考えています。

私たち一人ひとりが、誰かの「ライフセーバー」になることが求められている時代です。その第一歩は、見えない心の声に静かに耳を澄ますことから始まるのではないでしょうか。


参考文献


内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』https://www.cfa.go.jp/resources/research/chilren-attitudes

NPO法人ユースクリエイト『若者の社会参加に関する実践レポート(2022年)』https://www.youthcreate.jp/report/2022

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