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学校に行けない子どもたち 不登校の背景と支援のあり方

  • 執筆者の写真: ACBaL
    ACBaL
  • 2月11日
  • 読了時間: 4分

更新日:4月19日

「行かない」のではなく「行けない」子どもたちへ


「どうして学校に行かないの?」と問うその前に、「なぜ行けなくなってしまったのか」を想像してみてください。今、日本では年間およそ30万人もの子どもたちが「不登校」とされています。文部科学省の調査では、2022年度に小中学生の不登校児童生徒数は約29万9,000人と、過去最多を更新しました。



不登校はもはや一部の特殊なケースではなく、誰の周囲にも起こりうる「ありふれた現象」となっています。かつては「怠け」「甘え」と片付けられることもありましたが、現代の不登校には、心の健康、対人関係、家庭環境、学習不安など、複雑な背景が絡んでいます。


このコラムでは、不登校の実態とその背景に迫りながら、私たちができる「つながりと支援」の在り方を丁寧に探っていきます。



増加する不登校、その背景にあるもの


不登校の要因は一人ひとり異なり、「これが原因」と一括りにすることはできません。しかし、文部科学省の『児童生徒の問題行動等調査』によれば、不登校の主な要因として以下のような項目が挙げられています。

  • 無気力・不安などの情緒的要因

  • 友人関係やいじめなどの対人関係

  • 家庭内の問題(親子関係の不和、経済的困窮など)

  • 学業への不安や授業についていけないという自己否定感

  • 学校という集団生活そのものへの違和感や苦痛


特に最近では、感覚過敏や繊細な気質(HSP傾向)をもつ子どもたちが、騒がしい教室や強い指導の場に馴染めず、心身に不調をきたすケースが増えています。また、SNSを通じたいじめや人間関係のトラブルが、不登校のきっかけになることも少なくありません。

さらに、不登校の長期化によって「学校に行っていない自分」への自己否定が強まり、ますます外の世界とつながる意欲を失ってしまうという悪循環に陥ることもあります。



「戻す」ではなく「受けとめる」支援へ


従来の支援の多くは、「学校に戻す」ことを目標としていました。しかし、現在では「無理に戻す」よりも、「本人が安心できる環境を整えること」が重視されています。学校復帰をゴールに設定すること自体が、プレッシャーになってしまう場合もあるのです。


大切なのは、「あなたのままでいていい」というメッセージを送り続けること。焦らせず、責めず、ただ存在を認める関わりが、心の回復への第一歩となります。

支援者や家族が心がけたいのは以下のような姿勢です。


1.    評価や比較を手放す


「同じ年の子はみんな行ってる」「高校くらい出ないと」といった言葉は、本人を追い詰めるだけです。学校に行っていない状態を否定せず、その中で何を感じているのかに目を向けましょう。


2. 「安心できる居場所」を確保する


家庭、地域、フリースペースなど、「自分らしくいられる場所」があることが、再び社会とつながるための土台になります。見守る大人が「学校だけがすべてではない」という視点を持つことが大切です。



3. 話さないことも尊重する


「話してごらん」と言っても、言葉にできない思いを抱えている子は多くいます。無理に聞き出そうとせず、「黙っていてもそばにいる」ことが、信頼関係を育む近道です。



多様な学びと「社会との接続」の支援


文部科学省は「不登校は誰にでも起こり得る」とし、学校以外の学びの場の選択肢を拡充しています。フリースクール、適応指導教室、ICTを活用したオンライン学習など、形式にとらわれない学びの支援が広がりつつあります。


こうした多様な学びの場では、年齢や学年に関係なく個別のペースで学べるため、「自分を否定されない経験」を得られることが特徴です。また、社会との接点として、地域活動やボランティアを通じた関わりも、自己肯定感の回復や将来への希望につながります。


何よりも大切なのは、「学ぶ意欲」は失われていないという前提で接すること。学校に行っていないからといって、成長が止まっているわけではありません。社会とつながる形は人それぞれであってよく、それを支える環境を共に模索することが、私たちの役割です。



環境が人を育む


鳥は飛ぶことを教えられない。風と空がそれを教える。 アレックス・ヘイリー(米国 1921年〜1992年、作家)


すべての子どもが同じ空を飛ぶ必要はありません。必要なのは、その子自身の風を感じる時間と場所を確保してあげることかもしれません。



誰もが誰かのライフセーバーに


誰かの命を救うのは、医師やカウンセラーだけではないかもしれません。たったひと言「どうしたの?」と声をかけてくれたあの人。何も言わず、ただそばにいてくれたあの人。そうした誰かの存在が「自殺」という選択肢を遠ざけてくれると考えています。


私たち一人ひとりが、誰かの「ライフセーバー」になることが求められている時代です。その第一歩は、見えない心の声に静かに耳を澄ますことから始まるのではないでしょうか。


参考文献

・文部科学省『令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』https://www.mext.go.jp/content/20231004-mxt_jidou01-100002753_1.pdf​

・日本財団『不登校の子ども・若者の支援に関する調査(2022年)』

・NPO法人 登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク

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