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デジタル時代の孤独 繋がっているのに独り

  • 執筆者の写真: ACBaL
    ACBaL
  • 1月28日
  • 読了時間: 4分

更新日:4月19日

繋がっているのに独り


いつでも誰かとつながれる。スマートフォンひとつで、世界中の人々と言葉を交わせる。そんなデジタル時代に生きる現代は、かつてないほど多くの「繋がり」に囲まれているように見えます。



しかし実態としては「誰にも本音を話せない」「見られてばかりで、素の自分を出せない」と感じている人が少なくないようです。LINEの既読、Instagramのいいね、X(旧Twitter)の反応。その一つひとつに一喜一憂し、気づかぬうちにオンラインでの反応に心が疲弊していってしまうことも珍しくありません。

「繋がっているのに独り」。それが“デジタル時代の孤独”なのかもしれません。

SNSとメンタルヘルスの関係


厚生労働省の「若者の生活と意識に関する調査(令和5年)」によれば、10代後半から20代前半の若者のうち、約3割が「SNSに依存している自覚がある」と回答しています。また、SNSの使用時間が長い層ほど「自己否定的思考」や「睡眠障害」「対人不安」といった精神的ストレスの訴えが多い傾向も明らかになってきています。

この背景には、SNSが「自己表現の場」であると同時に「評価の場」となっていることが挙げられます。特に若者は、同世代からの承認や共感を強く求める時期であり、他者からの反応によって自己価値を揺さぶられやすい状態にあります。

加えて、SNS上では誰もが“編集された自分”を演出しています。旅行の写真、楽しげな日常、美しく整った部屋。それらに触れるたび虚と実が入り混じり「本当の自分」との乖離を感じ、孤独や劣等感が強まってしまうのかもしれません。



デジタル時代における「心の健康」を守るために


では、この時代に生きる若者たちが心の健康を保つには、私たち大人はどのような関わりができるのでしょうか。以下に、日常の中でできる実践的なアプローチを紹介します。


1. オンラインとオフラインの「違い」を考える

SNSは便利で楽しいツールですが「すべてがリアルではない」ことを意識することも大切です。「SNSは演出の場でもある」「比較する必要はない」といった視点を共有することで、情報の受け取り方にバランス感覚が芽生えます。

また、親や指導者がSNSとの付き合い方について率直に話すことも、若者にとって参考になります。自分だけが悩んでいるわけではないと気づくことで、孤立感が和らぐこともあるのです。そう誰もが依存してしまうことはあるのです。


2. デジタル・デトックスのすすめ


定期的にスマートフォンやSNSから離れる「デジタル・デトックス」は、心身のリフレッシュに効果的です。「夜9時以降は画面を見ない」「1日30分は自然の中で過ごす」など、無理のない目標を一緒に決めて取り組むのもいいかもしれません。

若者自身が「SNSに疲れている」と感じられた時には、休むことを許す環境も必要です。デジタルに依存せず、自分と向き合う時間を持つことで、心の回復力が育まれることもあります。


3. オフラインの「安心できる関係」を増やす


どれほどSNSが発達しても、人はやはり“リアルな存在とのつながり”を無視することはできません。雑談できる誰かがいること、沈黙を共にしてくれる誰かがいること、そのような場(機会)が「心の安全基地」になることもあります。


子ども食堂、地域のフリースペース、学校以外のサードプレイスなど、SNSの外に「居場所」があることは、心の安定に直結します。大人がそれを知っていて勧めてくれるだけでも、若者にとっては大きな意味があります。



人間関係の原点


テクノロジーが進化するほど、人間関係の原点に立ち返る必要がある。 シモーヌ・ペレーズ(仏 1975年〜、社会学者)


デジタルの力は偉大ですが、孤独を癒すには、人の温もりも大切です。それぞれが補完しあいながら、時代に合った豊かな社会を創るのが大切だと感じています。



誰もが誰かのライフセーバーに


誰かの命を救うのは、医師やカウンセラーだけではないかもしれません。たったひと言「どうしたの?」と声をかけてくれたあの人。何も言わず、ただそばにいてくれたあの人。そうした誰かの存在が「自殺」という選択肢を遠ざけてくれると考えています。


私たち一人ひとりが、誰かの「ライフセーバー」になることが求められている時代です。その第一歩は、見えない心の声に静かに耳を澄ますことから始まるのではないでしょうか。




参考文献

  • 厚生労働省「若者の生活と意識に関する調査(令和5年度)」

  • 総務省「令和3年度 情報通信白書」SNSの利用実態

  • 日本心理学会「SNSと孤独感の相関に関する研究(2021年)」


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